コンビニでは、食品や日用品の買い物以外にも、公共料金やネット関係の支払いや、荷物の配達受取など、日々便利な社会インフラとして機能しています。
が、そんな社会インフラとも言えるコンビニ業界も、いくつか大きな社会課題を抱えています。
そのひとつが、『食品ロス』の問題です。
日本フランチャイズチェーン協会の調査によると、コンビニ1店舗当たり、10〜15kg/日の食品が期限切れで廃棄されています。
全国のコンビニ店舗数は約5.6万店になるので、単純に
15kg/日・店×365日/年×5.6万店 ≒ 30t/年
日本全体での食品ロス量が612t/年ですから、約5%をコンビニが占めていることになります。
この5%をどう捉えるかは、個々人の感覚に依ると思いますが、わたし個人的には充分に大きく、真剣に取り組むべき課題と考えています。
今回の記事では、食品ロスに関するコンビニの実情とコンビニの対策について、当事者としての思いと共に記載しています。
コンビニが食品ロスを出してしまう事情
売上減に直結 商品の欠品=機会損失
とにもかくにも食品を扱う小売店にとっては、一番大きな問題は『機会損失』なんです。
機会損失とは、店舗が商品を欠品してしまったことによって、本来その購入したかったお客様が買えなかったことによる損失です。
「そんな大した問題かな?」
「そのお客さんも別の商品を買えばいいじゃん!」
私も一従業員の立場の時はそれくらいの考えでした。
しかし、売上の全責任を抱えるオーナーとしての立場となると視点が少し変わります。
ほしい商品が買えなかったお客様は、別の商品を買って満足か・・・否です。
何かしら不服感が残り、場合によっては近隣の他店に移動します。そこでほしい商品を手に入れられた際には、「あのお店は品揃え悪いな」という印象にまでなり、足繫く通うお店とはならなくなってしまうのです。
商品一つ、金額にして数百円程度ですが、欠品という事態は甘く見れないのです。
欠品が積み重なれば、販売できなかった数百円だけでなく、印象を悪くしたお客様のその後の来店頻度の減少につながり、お店にとって将来的に大きな影響を及ぼしえるのです。
自由競争の名のもと、近隣に多店舗がひしめくコンビニ業界においては、非常にシビアな問題です。
また、個人経営であるコンビニオーナーは、店舗の売上を伸ばさないと自分の給料は増やせません。むしろ売上が昨年と同じでも、従業員の賃金が上がれば利益は減り、オーナーの手取りが減少するくらいです。(実際当店でも10年前→現在の時給で20%くらい上昇しています)
これは年功序列で年々給料が増える見込みが強い会社員とは大きく違います。
売上を伸ばすためには、新規の顧客獲得のための商品を準備する必要があり、そのためには多少の廃棄は覚悟の上で売場を作るのが、コンビニ業界の『できるオーナーです』
コンビニオーナーにとって、『食品ロス』は適正にリスクを取りながら攻めるための必要経費なのです。
本部にとってはローリスク
食品ロスが生じた場合には、その損害はコンビニオーナーがかぶります。
10年ほど前から、フランチャイズ本部側も部分的に廃棄コストを負担するようになりましたが、本部の規模からすると、本当にローリスクです。
販売の機会損失をなくし、売上を伸ばしてくれた方が、本部の収益も伸びるので、販促のためのキャンペーンも頻繁に実施されます。
例) おにぎり全品100円セール など
多少の食品ロスが生じようと、過剰在庫の方が本部側も利益が出やすい構造になっているのが実情なんです。((+_+))
よしおのお店での実情
実際の廃棄量
コンビニオーナーで実際に廃棄量を正確に把握している人はいないと思います。
なぜなら、コンビニでは廃棄を量(kg)ではなく、金額(円)で管理しているからです。
私のお店でも一般廃棄物処理業者からの報告でも、わかるのは容器、ペットボトル、缶などすべてのごみ含めた重量ですので、「食品ロスを何kg発生したか」を正確に把握できていません。(そもそも廃棄「量」を把握することにあまり経営的な意味はない)
当店での廃棄金額は、おおむね1.5~2.0万円/日です。
(以前大まかに重量計算してみると、ちょうど10kg相当くらいでした)
業界的には「廃棄金額は売上の3%が目安」と言われていますが、当店は日販約85万円に対して2%程度ですので、やや少なめ、という感じでしょうか。
避けられない「商品を後ろから取るお客様」
私のお店では、食品ロスを必要以上に出さないように、細心の注意を払って日々発注を行っていますが、悔しいことに避けられないロスがあります。
それは、一定数のお客様が商品を後ろ(新しい側)から取ってしまうことで、手前(期限が近い)の商品が残り、廃棄期限が来てしまうことです・・・(´;ω;`)
特に、パンやカット野菜の商品が「後ろから取り」されやすく、販売期限が長い(2~3日)割には廃棄金額が多くなりやすいのが現状です。
食品ロスを減らすためのコンビニの取り組み
コンビニ業界も食品ロスを社会的課題として認識していて、いろいろな対策を実施し、改善に向けて日々努力しています。
その一部を紹介します。
エシカルプロジェクトの導入
コンビニ最大手セブンイレブンでは2020年から『エシカルプロジェクト』の制度を始めました。
『エシカル』は直訳すると『倫理的な』という意味になり、最近では人や社会・環境を意識した『エシカル消費』という言葉が使われています。
全国のセブンイレブンでは、販売期限が近くに迫った商品に対してシールでアナウンスし、nanacoポイントをボーナスとして5%付与する、という制度が実施されています。
正直、nanaco(セブン&アイHDが発行する電子マネー)利用者にしか特典がないので物足りませんが、販売期限間近を進んで発信する姿勢には賞賛を送りたいと思います。👏
「お客様はむしろ期限間近の商品を避けて廃棄量が増えるのではないか?」という懸念もありましたが、少なくとも当店ではそのようなことはなく、体感的には廃棄量は減少しました。
季節品の予約注力
コンビニは季節商品を積極的に扱うことでも有名です。
・恵方巻
・クリスマスケーキ、チキン
・おでん
などなど、慣例的には機会ロスを避けるため、大量生産、大量消費、大量廃棄の典型でした。
しかし、近年では潮目は変わりつつあり、過度な在庫確保は自粛する雰囲気となってきました。
事前予約に注力して、需要と供給をなるべく合わせるように、業界がシフトしつつあると感じます。
おかげさまで我々も大量廃棄にビビりながら過剰在庫を抱えずとも良い季節行事を過ごせて、心穏やかでございます(笑)。
商品の長鮮度化、冷凍食品の拡充
おにぎりやお弁当、パン、サラダなど足のはやい食品はどうしても廃棄量が増えやすいです。
コンビニの商品開発部は、これらに対しても積極的に対策しています
最近人気のカップデリサラダ等では、カップ充填の際に窒素を使うことで酸素を追い出し、食品の劣化を防ぎ長鮮度化することで、廃棄量削減に取り組んでいます。
また、消費期限が非常に長い冷凍食品の種類を増やし、品質を向上させることで、廃棄リスクがほとんどない販売も可能になっています。
セブンイレブンの冷凍食品『金のマルゲリータ』は絶品ですので、ぜひとも一度ご賞味いただきたいです!!
テレビで紹介されて以降、長らく商品供給が追い付いていなかったのですが、最近ようやく常備できるようになりましたw( ̄▽ ̄;)。
行政とのタイアップでお客様への意識喚起
下記は北海道苫小牧市との取り組みですが、行政公認のポップを掲示して『手前から取り』を推奨し、食品ロスを減らそうという取り組みです。
地味に思うかもしれませんが、一般のお客様の意識を改善していくことはめちゃくちゃ大事だと思います。
レジ袋有料化は現場の手間ばかり増えた(笑)のですが、それよりもよっぽど低コストで効果が高い取り組みになると思います。
関西のコンビニでもこういった行政も巻き込んだ取り組みが実施されており、全国でお客様全体の意識が変わればよいなと期待しています。
まとめ 食品ロスについてコンビニ経営者としての思い
まとめると下記のようになります。
・コンビニから出る食品ロスの量は一日10~15kg/店、業界全体で年間約30t
・競争が激しいコンビニにおいて売上を伸ばそうと思うと、オーナーとしては覚悟をもって多少の食品ロスを発生させることは仕方がない。
・コンビニ業界としても、食品ロス削減のための取り組みは少しずつ進んでいる。
私はコンビニオーナーとして、多少の廃棄は仕方がないと思う一方で、非常に心は痛みます。
廃棄物の削減とコンビニの経費削減のために、昼ご飯は販売期限直前のお弁当です。
本当は、販売期限が切れた食品も健康に影響なく食べれるものも多いので、
食べられるうちに公的施設等の賄などに利用する
→ 家畜の飼料に加工して再利用する
→ 堆肥化して再利用する
といった形で、単純なゴミにならずにカスケード利用されていくのが理想ですが、コストや安全規制の問題でまだまだ社会実装されていません。(部分的なテストに留まっています)
ゆくゆく私に経済的・時間的な余裕ができれば、食品ロスの問題解決のために、汗水たらして行動したいですね。
ご拝読ありがとうございました。
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