【こんな人に読んでほしい】
・本人/親族が不動産を所有している
・親族に個人事業主がいる
・資産がそれなりに多く相続対策を考えたい
私事ではありますが、昨年2022年12月に、私の祖父が亡くなりました。
享年92歳・・・大往生でした。
相続や個人事業の承継について、人はそう何度も経験することではありません。
今回の記事では、私が体験した手続き内容について、備忘録も込めて記載していきます。
個人事業主や資産家の方の相続の際、この記事が役に立てばと思います。
相続手続きを通じての反省
まず今回の私の体験から、良かった点/反省点を記載します。
相続・事業承継でよかった点
・遺言書(公正証書)を事前に準備していたこと。
・不動産の状況を詳細に把握している司法書士(税理士)がいたこと。
・相続対策を実施していたこと。
母(義理の娘)を養子縁組で法定相続人に
家族信託/生前贈与で物件の一部を贈与済み
駐車場に新築戸建を建設し賃貸実施
・相続人(父)がある程度の現預金を貯めていたこと。
上記によって得られたメリットは
・『誰が何をどれだけ相続するか』で揉めることがなかったこと。
・相続に強いパートナーがいたことで不安なく各種手続きができたこと。
・葬儀/相続税等で現金不足(に由来する不動産売却)に陥らずに済んだこと。
とても重要だと思います。
相続・事業承継で次回に反省すべき点
・故人の遺志を生前にもっと確認しておくべきだった。
・青色申告の予備知識不足であったこと。
・生命保険の金額が少ないこと。
・マイナンバーカードを事前に作っていなかったこと。
故人と相続人とのコミュニケーション不足や私の勉強不足に由来することも多いですが、相続を受ける側の人間の知識・心構えも含めて、本当の相続・事業継承と言えると思います。
背景
祖父は30歳の時に体調を崩して以来、自営業一本で頑張ってきた、我流の商売人でした。
幸いご先祖様から頂いた土地があったようで、その土地を利用した不動産賃貸業、並行して法人として雑貨屋→酒屋→コンビニと小売店の経営も実施して、一財産築いた立派な人間でした。
父がコンビニの跡を継いで、小売店経営から離れた後も、亡くなる直前まで30年近くもの間、不動産賃貸業を続けていました。
晩年に脳梗塞を発症した後、祖父は病院に寝たきりに近い状態になってしまってしまいました。
そこからは身体・頭の衰えが急速に進み、およそ1年程で息を引き取る形になりました。
(コロナ禍で満足にお見舞いにも行けず、少し後悔の残る最期になってしまいました)
そんな生涯を送ってきた祖父が残した遺産はそれなりのものになっていました。
多少フェイクも入れますが、祖父の相続に関わる状況(財産状況・家族構成)は下記となります。
・故人である祖父の法定相続人は3名(実子:父・叔母、養子:母) ※下記の図参照
・故人の遺産状況 現金/生命保険は少々、不動産は複数所有。
不動産の評価額から相続税が発生するレベル。
・不動産事業については『家族信託契約』を結んでいて、実働は私/妹で実施できる。
(家族信託については過去の記事を参照ください。)
・コロナ禍で入院前に通帳等は預かっており、不動産事業に必要な支払いや手続等は私で対応していた。
・遺言書(公正証書)は準備していた。
祖父の指示で、数年前に母と養子縁組を実施して法定相続人を増やしていたのはかなり大きい節税対策です。
相続税の基礎控除額は、 3,000万円 + 600万円×法定相続人の数 で決まります。
つまり法定相続人を一人増やすことで、控除額が600万円増えることになります。
相続税額を仮に10%とすると、600万円×10%=60万円分の節税になります。
用紙一枚を役所に提出するだけで実施できる相続税対策なので本当にオススメです。(なお、1名までしか節税対象になりません)
通常では代表相続人である父が諸手続きを実施するのが通例だと思いますが、今回の場合は不動産関係の情報を私の方が把握していたこともあり、可能な限り私で代行しました。
親子で同じ職場で自営業でしたので、仕事を調整して平日昼間に時間を作れる状況にあったのは幸いでした。
諸手続きをやるために、トータルで30時間は費やしているかと思います(体感)
相続の手続きで実施したこと
通夜・葬儀の実施
葬儀屋さんの手配、お寺さんの準備など行います。宗教により様々と思いますので、各宗派のルールに則って実施することと思います。
よしお家は浄土真宗で、今回は家族のみの簡易な葬儀でも100万円近く費用が掛かりました。
お花や祭壇のグレードなど色々あるのですが、他業者と相見積する時間もなく、遺された人にとって安く済ませるのは心情的に難しいです。生前元気なうちに、本人が業者・プランまで決定しておくと、遺される側にとっては「本人が望んだものを実施できる」と思えるだけでとても楽になると感じました。
役所等への届出
病院からもらった資料とともに死亡届を役所に提出します。
ほかには、所得税や住民税の未納分、年金の未受領分などがあったため清算しました。
(自治体によっては葬儀の助成金があります。私も5万円行政より補助いただけました)
窓口でも教えてもらった他、下記の記事を参考にさせてもらいました。
この後の色々な手続きで相続人の印鑑証明書や住民票、戸籍謄本が必要になりました。
市役所に行かずともコンビニで証明書類を出力できるサービスがありますので、ぜひマイナンバーカードをご準備の上、ご利用ください。
両親がマイナンバーカードを作っておらず、必要になるたびに市役所に行っていたのはなかなか手間暇がかかり、大変でした。
親族・関係者への連絡
祖父が亡くなったのが12月上旬ということもあり、喪中はがきを早急に対応しました。
親族関係は父で連絡先を把握していましたが、関係者(不動産関係や友人関係)がどこまで連絡すべきか、こちらではまったくわかりませんでした。
葬儀内容について同様、遺族の事を考えるなら、死去した際に連絡してほしい人たちをまとめたリストを生前に準備しておくべきですね。
各種契約の確認・解約
故人の契約を一つずつ確認、解約していきました。
銀行やクレジットカード会社に連絡して、一年分の明細を確認し、引落があった取引先に片っ端から電話して対応していきました。
祖父が契約・支払が発生していたものは下記でした。
・クレジットカード
・入居していた施設、病院
・固定電話、携帯電話
・電気水道高熱費関係
・NHK
・会員関係(DAZN、JCOM)
契約者の名前、住所(生年月日)があれば、大体はサポートセンターへの電話で解約できました。
(一部、書類を送付→解約届の提出が必要な契約もあり)
ただ、早く対応しないと契約が残り続け、基本料金の支払い残債が貯まることがあり得ますので、こちらはなるべく早くに対応をオススメします。
契約先を洗い出すのはなかなか大変でしたので、可能であれば『契約先のリスト』を家族全員で共有しておくと、とても楽になると思います。
相続の手続き(相続税の計算、不動産登記)
相続税の計算対応は『相続に強い』税理士にお願いしました。
顧問税理士さん(コンビニの決算や祖父の確定申告でお世話になっている)はあまり相続の経験なしとのことで、家族信託の契約時にお世話になっていた司法書士の先生に紹介頂きました。
一回の面談で
・準備すべき資料の一覧
・相続税の概算
が分かりましたので、現金や手続きの準備において、概ね目処が付き安心感に繋がりました。
(司法書士さんより不動産関係のお話が通っていたので非常にスムーズ)
不動産が関わると、税金の計算が非常に煩雑になりますので、亡くなった方がそれなりの不動産を持っていた場合には、税理士に任せることをオススメ致します。
なお税理士費用の目安は、相続資産評価額の1%とのことです。
ここで税理士の先生に言われたことは、「相続税対策として惜しむらくは、遺していた現預金の割に、生命保険の掛金が小さいことですね」とのことでした。
相続の際には、死亡保険金の非課税枠があり、 500万円×法定相続人 で計算されます。
今回のケースでは、 500万円×3人 =1,500万円 の非課税枠がありましたが、ほぼ使わずの状態でした。
晩年に現預金に余力がある状態であれば、生命保険の掛け金を非課税枠まで上げることも選択肢かなと思った次第です。
私自身が終身保険にも加入している理由の一つでもあります。(過去記事参照)
不動産の登記に関しては、今回私は手続きをすべて司法書士の先生に依頼しました。
「遺言書の通りに対応してください」で十分に事足り、不動産一件当たり数〜十数万円くらいで対応してもらえました。
権利に関わる手続きは専門的なうえ、素人がやってミスがあると後々非常に厄介と思います。
個人的には本件もプロに頼んでミスなく実施してもらうのが吉かと思います。。
不動産事業承継関係の手続き
不動産事業の各種契約内容の確認・名義変更
不動産事業に関する契約についても、個人契約の時の手続きとほぼ同じですが、
事業の場合は各種契約を引き継ぐ必要があり、電話一本で対応できません。
・クレジットカードの解約
・共用部の電気契約、建物付属のインターネット契約の名義/口座変更
・家賃の振込先の変更依頼(←自主管理だったため)
・火災保険の名義/口座変更
・債務関係の名義/口座変更
契約先への連絡→書類発送→記入押印→返信→受付・変更登録完了
まで結構時間が掛かります(だいだいどれも1か月ほどかかりました)。
債務関係に関しては、不動産登記も必要で手続きに3か月以上かかっています。
その間に故人の口座が凍結されるとその後の支払い等が非常に厄介になりますので、銀行には事業用口座はしばらく凍結しないように依頼しましょう。(融通してくれるました)
故人の青色申告
今回は亡くなったのが12月ということもあり、11月に入金されていた家賃(12月分)までを令和3年の収入として、顧問税理士の先生に青色申告資料を作成してもらいました。
必要資料を集めるのに少し苦労はしましたが、2021年に発生した費用についてはあらかた把握していたため、大きな問題なく実施できました。
ただ、事業の詳細を相続人が把握していない場合は、非常に厄介です。
事業主にいつ何があっても良いように、事業に関する書類・情報の保管場所は相続人の方と共有しておくことが望まれます。
事業用の銀行口座新規作成 / 個人事業の開業届・廃業届
事業の資金管理をするための銀行口座を、3人の相続人それぞれで作成してもらいました。
事業を行う場合、個人で生活用に使っている口座とは別に準備しないと、まず資金管理ができません。
その際は屋号付きの口座でも良いかもしれませんが、今回は相続により3名に不動産が分けられ、青色申告で事業的規模と見なされない状態(5棟10室基準以下)だったので、各者屋号なしの個人名義で作成しました。
事業的規模ではありませんが、とりあえず不動産事業を継承する相続人については今後青色申告ができるよう、個人事業の開業届は出しておいていただきました。
(併せて祖父の個人事業の廃業届も提出)
まとめ
昨年の祖父の逝去により、この度私としては初めて相続や不動産事業の承継に関する手続きを実施していきました。
・生前の準備がほんっっっっっとうに大切
故人の意思の明確化。(遺書、葬儀プラン、喪中連絡相手)
専門家との人脈づくり。(税理士、司法書士)
故人の資産整理(資産構成が不動産に偏っていると、相続人は相続税の納付が大変)
必要であれば相続税対策(生命保険や養子縁組)。
・不動産を持つ人、事業を営んでいる人は、常に自分にもしもがあった時のことを考えて、
常日頃から遺族となる人たちが困らないように準備しておくべき。
コミュニケーションも超重要。
契約先のリスト化
事業に関する資料・情報の保管場所の共有
これが今回の教訓です。
個人的な所感として、手続き全体を通じて私にとってストレスだったのは、『やるべきことの全体が不明瞭であること』でした。
初めてだらけの事だったので、ほぼ全て手探りです。
相続税や登記関係だけでも専門家に任せることができて、本当に良かったと思っています。(お金はかかりましたが)
「遺族は悲しんでいる暇がない」というのは、本当だと思います。
相続関係を適当にやってしまうと、下手をすると『脱税』になり、罰則ものです。
緊張感の中での対応は、それなりに大変でした。
この記事が少しでもどなたかの役に立てば幸いです。
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